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Interview

- 卒業生インタビュー -

渡部 玄

タグシクス・バイオ株式会社


1)まずは、簡単なプロフィールを教えて下さい。

大学院修士課程を修了後、国内製薬企業の研究所にて創薬化学の研究者として研究開発に約13年従事しました。

前半は研究者としてひたすらに有機合成の実験を行っていましたが、後半はプロジェクトのリーダーも任され、プロジェクトの方針立案や他部門とのコミュニケーション、外部との交渉なども経験しました。

また、在籍中には研究出向で大学院博士課程を修了しPh.D.を取得しました。

その後、創薬スタートアップへの転職を経て、2021年より現在の会社に入社しました。

入社時は事業開発マネージャーとして提携候補へのコンタクトやピッチイベント登壇などの業務に従事していましたが、2022年より取締役COOに就任し事業開発業務だけでなく、社内の研究開発マネジメント、提携先とのコミュニケーション、契約書管理などの業務にも従事しています。


2)なぜMOTを学ぼうと思われたのですか?また、その中でも農工大を選ばれた理由があれば教えてください。

製薬企業にて10年以上研究職として研究を行い、特にリーダーとして業務を行うようになった際に、「経営陣はなぜこのような判断をしたのだろうか」とか「会社のパイプラインの優先順位付をどういう理由で行っているのだろうか」といったことに疑問を持つようになりました。

社内で経営に携われるのはまだまだ先のことになると思い、まずは経営サイド視座に立って、その思考や背景ある理論を身につけたいと考えていました。

当然、経営について学ぶのであればMBAも候補に上がると思います。

MBAやMOTを問わず他大学のビジネススクールについて調べたり、実際に体験入学をしたりする中で、自分が培ってきたキャリアやバックグラウンドを活かすには、技術に立脚した経営について学ぶ必要があると考えたため、MBAではなくMOTを選びました。

また、数あるMOT大学院の中で農工大を選んだ理由は、私が目指す『経営のわかる技術者・研究者』、『技術のわかる経営者』の育成を農工大が目指していたこともありますし、私の専門である生命産業技術コースを設置していることもあります。

そして、公開講義にて林田教授の「技術企業経営概論」を聴講した際に、あるケーススタディについて学生が各自の考えることや今後の経営戦略、成長戦略について白熱した議論を交わしているのを目の当たりにして、まさにこのような環境で経営について学びたいと強く感じたことが一番の理由です。


3)東京農工大学のMOTに入学され、当初の目標は達成できたと思いますか?

『経営のわかる技術者・研究者』、『技術のわかる経営者』になるという点でいえば、当初の目的はかなり達成されたと考えています。

経営戦略、会計、財務、知財、組織論、マーケティング、イノベーションと、多岐にわたって知識と実例について学ぶことができたと思います。

また、いくつかの授業でおこなったケーススタディでは、過去のデータやレポートを参考に自分がその企業の経営陣になったつもりでどのような経営判断をするのかということをディスカッションするのですが、さまざまな業界から異なるバックグラウンドを持った年代も多岐にわたる学生が集まってきているため、自分の経験からは思いつかないようなアイデアや提案に触れることができ、自分自身の視野を広げ、見識を深めることができたと感じています。

もちろん実際に経営に携わるようになると、座学やケーススタディで学んだことがでは当然対応できない場面も多々ありますが、「あのケースの考え方は使えないだろうか」「あの授業でやったことは生かせないだろうか」と自分自身のアイディアや思考の引き出しを増やすことができたのではないかと感じています。


4)在学中のお仕事と学業の両立はどのように実現されたのでしょうか?

私が入学した2020年4月といえば、皆さん記憶に残っているかと思いますが新型コロナウイルスの緊急事態宣言ちょうど発出された時期に重なり、農工大に入学することを決めた1年前とは全く異なる世界になっていました。

仕事も在宅勤務となり、対面授業もなくなり、オンラインでの授業となったことで、慣れない新しい環境でやりくりしていくことはとてもハードでした。

一方で、農工大は早くからオンライン授業をうまく使っていた印象があり、平日夜の授業には大学へ移動することなく仕事後すぐにでも授業に参加できたため、以前の学生よりはスケジュール管理はしやすくなっていたのかもしれません。

また、授業は平日夜と土曜のみですが、各授業のレポートはもちろん、グループ発表に向けたミーティングもありますし、ゼミのプロジェクト研究の推進のための各調査やCS (Case Study) / FS (Field Study)などの報告会の準備などやるべきことは山ほどあります。

慣れるまではレポートの締め切りが間に合わなく学生時代以来の徹夜を何度かしてしまった点は、自分自身のタイムマネジメントができていなかったと反省していますが、途中からは多少は改善を図ることができ、そういった部分でも成長ができたのではないかと思います。

もちろん、このようなハードな環境でなんとか仕事と学業を両立して2年間やり切ることができたのは、職場の上司や同僚の理解、農工大の同級生、先輩後輩の協力と、何より家族のサポートのおかげだと考えております。


5)東京農工大MOTのカリキュラムはいかがでしたか?また、修了してよかったと感じている点はどんなところですか?

カリキュラムに関しては、ヒト・モノ・カネ・技術について網羅的に各分野を学習できましたし、座学、クラス討議、グループワークがバランスよく組み込まれていると感じました。

先生方も各産業技術分野のスペシャリストの教員と、経験豊富な実務家教員がいらっしゃるため、疑問に思ったこともすぐに相談できる環境で、非常に恵まれていると感じました。

また、ゼミを主体に行うプロジェクト研究は、CS、中間発表、FSと進んでいきますが、しっかりとこれら課題に取り組み、マイルストーンを達成していくことで、最終報告の骨子が出来上がるようなプログラムを組んでいる点は、非常に良かったです。

さらに、先輩、同窓生、後輩と社会人、新卒学生関係なく、優秀な方ばかりでした。普段の職場や業界では決して接点ができないような多様性のある方々と出会えることはMOTの魅力の一つだと思います。

在学中は意見を交わし合い、切磋琢磨できる最高の学友でしたし、卒業後も連絡を取り合う人もいるため、非常によいネットワークを構築することができた点は、自分の人生にとって価値のあるものとなりました。


6)在学中、特に印象に残っている講義やイベントがあれば教えてください。

公開授業で衝撃を受けた林田教授の「技術企業経営概論(現:グローバル経営戦略概論)」と「技術企業経営戦略論(現:経営戦略概論)」は、実際に学生となってから受講しても印象的で、自分自身が一番成長できた授業でした。

講義では特定企業のケース取り上げ、自分自身がその会社の経営陣の立場に立ってケース資料だけでなく内部環境・外部環境を加味して経営課題に対して回答を準備する必要があります。

さらに、実際に授業では他の学生と全体討議を行うことで、多様な意見に触れ、その場で新しいアイディアに到達することもしばしあるため、自分の視座や思考より高めることができたと考えています。

また、ケースレポートでは同様のことを資料へ落とし込むことで、データに裏付けられた資料を作成することを意識的に実行することができるようになりました。

さらに、ケースグループ発表では、それをチームとして意見、方針をまとめ、プレゼンにする過程で、他者の意見を尊重しつつも、チームとしての戦略を立案していくことで、かなり実戦に近い形での提案をする経験ができたと考えています。

両授業は非常に得るものが多く、価値がある授業でしたので、2年次もオブザーバーとして授業に参加させてもらいました。1年次には取り上げなかったケースは新鮮な気持ちで取り組むことができましたし、同じケースもいくつかありましたが、参加メンバーが違えば議論の方向も全く違う方向へ進んでいくため、前年にはなかった意見に触れることができた点は、翌年も参加してよかったと感じています。

また、前年のレポートやグループ発表で扱った企業が実際にどのような戦略を実行し、翌年どんな結果になっているのかということをフォローするができたので、答え合わせではないですが、実際の経営陣が何を考えて経営方針を決めているのかに少しは近づくことができたと考えています。


7)学生生活を通じて、ご自身に変化はありましたか?

私は、在学中に典型的な製薬企業からベンチャー企業へと転職したため、仕事も、環境も、生活も、考え方も大きく変化しました。

転職を決意した背景には少なからず農工大MOTで学んでいたことが影響を与えたと考えています。

また、学生生活で考えると、出願時から中間発表まで行っていたプロジェクト研究のテーマは、そのまま進めては自分自身にとって中身のない内容となってしまうため、転職先に価値を生み出す内容へと変えざるを得ませんでした。

そんな状況ではありましたが、ゼミの林田教授にはプロジェクト研究の新しい方向性について、親身になって、また時間を惜しまず何度も相談に乗って頂き、最終的に自分にとって非常に有用な内容となり、プロジェクト研究を完遂することができました。

また、在学中にプロジェクト研究に関連した内容を学会で発表した際には、質疑応答の際に興味深い視点だとコメントをもらい、学外に向けても自分自身の研究成果として発表する機会を持つことができ、良い経験となりました。

そして、農工大MOTの2年間で培った知識と経験は、この予測困難なVUCAな時代でもサバイブしていくための自分自身の軸と自信の構築に繋がったと考えています。


8)今後入学を検討している皆さんへひとことお願いします。

私の好きな言葉に、吉田松陰の「夢なき者に理想なし 理想なき者に計画なし 計画なき者に実行なし 実行なき者に成功なし 故に夢なき者に成功なし」という言葉があります。

皆さんの夢の実現に、農工大MOTで得られる知識、経験、出会いが価値をもたらすと感じたならば、是非とも受験されることをお勧めします。

このページを見ている皆さんは、農工大のMOTに興味を持って、受験を考えて、もしかしたら迷っている方もいるかと思います。

人によってバックグラウンドやMOTに参加する目的が違うかとは思いますが、まずは公開授業や入試説明会に参加したり、ご自身の興味がある分野の教員にコンタクトをしたりしてみてはいかがでしょうか。

最初の一歩を踏み出すことが何よりも重要だと思いますし、実際に農工大MOTに触れることで、今まで気づかなかったことや自分がなぜMOTに興味を持ったのかを再確認できるのではないかと思います。

農工大MOTで過ごす時間は、非常に濃密で、想像しているよりも自分自身を成長させることができる、有意義な時間になると思います。

そして、農工大MOTでは、社会人学生のOB/OGと現役生の繋がりもあるため、将来懇親会などでお会いできたら嬉しいです。

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